セーフティセックス狂騒曲
(グラサイ搭乗設定。腸内洗浄、拡張などの表現が結構詳細に書かれています。あと空イキとかいろいろ注意)
ヴェインは男である。つまり、自分が準備もなしに受け入れることが出来る体ではないことを、よく知っている。
だから、幼なじみ兼恋人たるランスロットに、初めてセックスを求められたとき、嬉しくあった反面、怖くもあった。
『肛門内は人体のなかでもっとも危険な菌が存在していて、たいへん危ないですので、安易なアナルセックスはやめましょう』というのは、男所帯で『そういうこと』が多いとされる騎士を目指すため王都で勉強していた時分に、保健体育の先生に言われたことだ。
――――そんな危険なこと、ランちゃんにさせられない!
だから、抱かせて欲しいというランスロットに、ヴェインはランちゃんごめんというほかなかったのだ。
ランスロットは、そりゃそのときはしおらしく引き下がったが、それでも彼はヴェインをほしがったし、なにかにつけてそういう『誘い』をかけてきた。
そう。恋人たるもの、やはり誰だって(これは言い過ぎだけれども)ひとつになりたいのである。勿論ヴェインだって同じ気持ちだった。
しかし、ヴェインは鉄の意志で、ノーを貫いた。
自分だって、ランちゃんとそういうことがしたい。そして、かっこよくてヒーローみたいな俺の幼なじみを抱くんじゃなくて、彼に抱かれたい、と恥ずかしながら思っていた。(それは恥ずかしいことではなかったし、もとよりランスロットはヴェインを抱くつもりしかなかったが、ヴェインはかわいらしくもない自分が抱かれたいと思うのは分不相応だと思い込んでいたのだ)
だから、ランスロットの誘いをなにかと理由をつけて断るたび、ヴェインのこころには罪悪感が募った。
でも、我慢することがランスロットのためだと信じていたのだ。
・・
「どうした、色ぼけ野郎。俺を突然呼び出して」
その日のランスロットは、いやに元気がなかった。
ランスロットと駄犬(ヴェインのことである。パーシヴァルはそう呼んでいる)が付き合い出してからというものの、パーシヴァルはときおり、いや頻繁にランスロットに捕まってはのろけのような恋愛相談に付き合わされていた。
なんで俺がこんなことをと思いながらも、根が律儀なところのあるパーシヴァルはその相談についつい乗ってしまうのだった。
「いや、俺とヴェインが付き合い出してもう三ヶ月だろ」
「ああ、そうだな......」
そして俺がマルモッコ保護協会から送られてくる元気なマルモッコたちの写真を持ち歩くようになったのも、三ヶ月前からだ、と嫌味を言いそうになるのをなんとかこらえる。
「三ヶ月って、結構長くないか」
「貴様と駄犬が幼なじみとして過ごした二十数年に比べたら、圧倒的に短いがな」
「......わかってるさ」
ヴェインがまだ俺のことを『幼なじみ』としか思ってくれていないかもしれないってことも。
とシリアスぶって続けるランスロットであったが、そのお悩みの内容を知っているが故、パーシヴァルは苦虫をかみつぶしたような顔になる。
何こいつは深刻げにしているんだ。
「でも、恋人になって三ヶ月だぞ! 手もつないだ、デートもした! こっそりキスだってした! 次は何だ? 結婚か? 俺だって健全な男だから、そろそろヴェインを抱きたい」
「帰っていいか」
「そりゃ、はじめは恥ずかしいのかなとか、やっぱり怖いのかなとか、思いましたけれども」
「なんで敬語なんだ」
「もう断られて三度目なんですよ。正直チンコが痛い」
「お前、燃やすぞ」
「俺の性欲はいつでも燃え上がっているよ......」
帰りたかった。はあああ、とランスロットは騎空艇の自室に設けたテーブルに倒れ伏した。
なんで俺が腐れ縁のシモの相談を受けねばならないのだ。駄犬も駄犬だ、なぜこんなになるまで放っておいた。
「はあ、いますぐベッドにくくりつけてメチャクチャにしたい」
今日の夕飯はグラタンがいい、というくらいの気軽さで紡がれるえげつない願望に、パーシヴァルは
ぎょっとした。
涼しげな顔をしておいて、意外とおとこくさいヤツなのだ、こいつは。
「無理矢理はやめておけ。受け入れる側のことも考えろ、男同士のセックスはどう考えてもしたのほうが負担が大きい」
だよなあ、と相づちを打つランスロットの目は言葉に反して完全に据わっていた。
ああ、とパーシヴァルは息を吐いた。
こいつが犯罪者になるまえにどうにかしろ駄犬!
・・
「じーちゃん、なかなかヒかねえな」
「まあそんなもんじゃ」
一方そのころ、当のヴェインはというと、グランサイファーの甲板の縁に座り込んで、空での釣りに興じていた。
最近よく共闘するようになった老年のハーヴィン・ヨダルラーハは、ヴェインにとってずいぶんと前になくした祖母のことを思い出させ郷愁に浸らせた。
おばあちゃんこだった彼は、ヨダルラーハのことをじいちゃんと呼んでよくなついた。
今日の釣果はあまりよくない。空域のせいなのか、なにもめぼしいものは引っかからなかった。
「なあ、じーちゃん」
だから、自然と方向は無駄話へと向かっていく。
ヨダルラーハはヴェインの目下の悩み事について話せる数少ない相手だった。かれは格別聞き上手であったし、なにより口が堅かった。
「なんじゃ」
「俺とランちゃんのことなんだけどさ」
「ま~たあの小僧か。お前さんたちは本当に仲睦まじいのう。まあ、恋人同士だから当たり前かもしれんが」
ヨダルラーハは、釣り糸を垂らしたまま、言う。
この話題はもう何度も聞かされていて耳にタコができそうだったが、実の孫のように慕ってくれている子供(ヴェインは二十五歳だが、ヨダルラーハにしてみればまだまだ子供だ)の悩みなら別だった。
「いやまあ、恋人なんだけどさ......。俺、もう三回もランちゃんの誘いを断ってるんだよ」
「そりゃまた、なんで」
「そ、それは......。セ、セックス、だから......」
もごもごと口ごもるヴェインに、ヨダルラーハは目をぱちくりとさせていたが、しばらくすると、ほお~~~~と言ってにやあと笑った。
「もうそんなところまで進んでおったとはの」
「だけど、俺とランちゃんは男同士だろ。男女みたいにはいかねえの。騎士養成課程で習ったんだぜ。アナルセックスは危ないって。俺、ランちゃんに病気になって欲しくないし......。別に、準備とかが怖いってわけじゃないんだ。俺はランちゃんのためならなんだってできるからさ」
ヨダルラーハは、釣り竿をくいくいと動かしながら、どうしたものか、と考えた。
ヴェインの思いやりはもっともだが、それではランスロットが気の毒だ。
三回誘って、三回とも断られて、勢い余って嫌われているなどと思い込んだらそれこそ大変なことだ。
思い違い、勘違いのすえ破局、なんてことになれば、大物を釣り糸が切れて逃がしたときよりショックが大きいだろう。
あるべきものはあるべきところに収まっているのがちょうどいい。ヴェインはランスロットとともにいるのが一番いいのだとヨダルラーハは考えていた。
「でも、やりたいんじゃろ」
ズバリとヨダルラーハが言うと、ぶっ! とヴェインは噴き出して、握力で釣り竿をバキンと折ってしまった。
「なっ、あ、ああ! じいちゃんごめん!」
「なあに、換えはいくらでもある」
それより、とヨダルラーハは続ける。
「釣り竿の換えはいくらでもあるが、お前さんの恋人のかわりはどこにもおらんじゃろうなあ。病気にならん方法ならどこにでもころがっとるわい。理由つけて怖がってないで腹アくくって、抱かれてこい!」
ばし、とヨダルラーハが背中をたたけば、ヴェインは何かを決意したかのように頷いた。
・・
ヨダルラーハのもとからはなれたヴェインは、一目散にランスロットの部屋へと走って行った。
「おいおい! 走るの禁止! そんなに走ったら床が抜けちまうだろうが!」
すれちがったラカムに苦言を呈されたが、そんなことにかまってられなかった。
心臓がドキドキとッ脈打つ。気持ちがはやる。
今日は、俺は、ランスロットと!
「ランちゃん、今夜、俺の部屋な!」
ノックもせずにヴェインはバンと扉を開けると、中の様子もほとんど確認せずに部屋にいたランスロットに向かって言った。
そして、そのまま逃げるように自室へと駆け出した。
陽はもう暮れようとしていた。
・・
「ええと、薬だろ、ポンプ、洗面器......。買っといてよかった」
ヴェインは団長に与えられた私室で、アナル洗浄用の器具を並べて確認していた。
断ってはいても、準備するための道具はそろえていたのだ。
なぜなら、ヴェインもまた、『それ』を期待していたから。
この騎空艇では、部屋にシャワーはあるが、トイレは共用だ。幸い、ヴェインの部屋は洗面所のすぐはす向かいだった。下剤を飲まなければならないので、それは都合がよかった。
夕飯には出席しなかった。も吐きでもしたら、と思うと食べる気にはならなかった。団長に今日はみんなと夕食をとらないことを告げると、へラッと笑って「いいよ、みんな知ってるから」と返され面食らった。
お前は声がでかいんだ駄犬、とたまたまグランと一緒にいたパーシヴァルがフクザツそうな顔で言った。
意を決して、用意していたコップに入れた水で、薬をひとのみする。
しばらくすると、ぐるぐると腹が鳴って、下腹部に鈍痛が走った。下剤が効いてきた証拠だ。
「う、ふ......ッ。うううう、やっぱいたっ......」
ベッドサイドのチェアに座っていたヴェインだったが、そのまま椅子からずりおちると、腹をおさえて胎児のように丸まった。ふうふうと息を吐いて、薬の袋に書いてあった十分が経つのを、激痛に耐えながら待った。
カチ、カチ、という時計の音が、いやに頭に響く。そうしているうちに痛みがどんどん大きくなって、目に大粒の涙があふれた。十分が途方もなく感じる。
ぐるぐると世界が回って、気持ち悪い。
物理的な痛みは戦闘での傷で慣れているが、さすがのヴェインもこの内臓から響く不快感や痛みには降参だった。
「う......、なっげ......し、しんど......」
はやく、はやくと時計を縋るように見つめながら待つ。
カチ、と最後の一分が終わったことを示す長針が十二を指した瞬間、ヴェインは痛む腹を抑えて飛び起き、部屋の扉を蹴破るようにして共同トイレに向かって飛び出した。
・・
「し、しんどかった......」
ヴェインはまだ不快感の残る下腹部をさすりながら、部屋のベッドにもたれかかる。
「これ毎回すんのかあ~~~~~~~」
はああ、とため息をついたが、これもランちゃんの為と思ってヴェインはまた立ち上がる。何が彼をそうさせるか、それはいわずもがなである。
「よしっ、次っ」
次にヴェインが手に取ったのは、真ん中が膨らんだゴム製のポンプだった。腸内洗浄用の道具を前に、ごくりと緊張でつばを飲む。
しかし立ち止まってもいられない。決心するとヴェインは部屋に備え付けのシャワー室へと向かった。
「えっと、風呂桶にこれくらいぬるま湯をためて......」
手を入れて、お湯の温度を確かめながら洗浄方法を思い出す。ヴェインは思い切って下履きを脱ぐと、ゴムチューブの片方をアナル内部へとたどたどしく層に有した。
先ほど便を吐き出したばかりの肛門は、思ったより簡単にゴムチューブを中に引き入れた。そして、反対の端を風呂桶に突っ込んだ。
ポンプを震える手で握ると、直腸内にお湯が流れ込んでくるのを感じた。
「う、く、うう......。ううう......」
下剤を使ったときほどではなかったが、ヴェインの額に冷や汗がにじむ。顔をしかめて、うめき声を漏らしながら、ポンプを握っていた手を緩める。
「ぐ、うううううううっ」
中から排出されていくぬるま湯が気持ち悪くてヴェインは頭を垂れてシャワー室の冷たいタイルに押しつけた。すべて排出し終わっても、これで終わりではない。あと一回のこっている。二回が目安だからだ。
「......ふ、キッツイぜ、これ」
泣き言ばかりもいっていられず、ばしんと両手で頬をたたくと、ヴェインはまた洗浄を再開した。
・・
「あ~~~~! 終わった~~~~~~~ッ!」
風呂桶の水が濁るころ、やっと洗浄が終わり、解放感にヴェインはべたりとタイル床に突っ伏した。
あとは中に香油を入れておくだけだ、と思ってシャワーを浴びて体を念入りにタオルで拭き、洗面器の水を流して部屋に戻ると、もう大分時間が経っていた。
窓から見える空は暗く、夜になっていることがしれた。ランスロットがやってくるのも時間の問題だった。
そうと決まれば、と慌ててヴェインは部屋に散らばった器具を袋にしまうと、緊張と高揚とでぎくしゃくしながらベッドの上に座った。
「ランちゃん......、俺頑張ったよ......」
待つ間考えるのは幼なじみのことだった。抱きたいと何度も言ってくれた彼は、喜んでくれるだろうか。いざ抱くとなってやっぱり俺みたいなのは無理なんて言わないでくれよなとどこか八つ当たり気味に思う。
ランスロットがやってきたのはそれからすぐのことだった。
部屋に入って、ベッドに正座をするヴェインを見るなり、ランスロットはもごもごと口を動かして、
「あの、ヴェイン。いいんだな?」
と聞いた。あれだけセックスを断っていたヴェインが、急に誘いをかけてきたことへの戸惑いとうれしさで、ランスロットはどぎまぎしてうまく言葉が出なかった。
ヴェインは、先ほどまでのつらさを見せない笑顔で、
「うん。いいぜ、ランちゃん。待たせてごめん」
と両手をランスロットに向けて伸ばした。
「......ッ! ヴェイン!」
ランスロットはたまらない、といったふうにベッドの上のヴェインに駆け寄って、腕の中に飛び込んだ。
「ヴェインはこういうこと、嫌なのかと思った」
ランスロットは、ヴェインの腕に抱かれてそう言った。不安にさせちまったなあと、ヴェインは頬をかく。
「嫌なんじゃなくて、ちょっと気持ちが追いついてなかっただけだ。でも、今回はちゃんと準備もした! 俺、頑張ったんだぜ。だから、ここまできてやめるなんて、言わないよな?」
「言うものか。お前の頑張りは、絶対無駄にしない」
ランスロットはそう言うと、ヴェインにそっと口づけた。
「はは、なんか照れるな。これからものすごいことするんだ~って思うとさ......、ってちょっ、うわ!」
「ヴェイン、すまない。先に謝っておく」
ランスロットは、両手剣使いの胆力をここぞとばかりに使って、ヴェインをうつ伏せにひっくり返した。驚くヴェインの寝間着のズボンを剥がすと、肛門に指をやった。
「ヴェイン、お前」
そこは、香油でしとどに濡れていた。中に指をそっと入れると、するりと簡単に入るほどだった。
「んっ、いや、準備したって言ったろ。ほら......俺だって、ランちゃんに迷惑かけたくないし」
「そんなこと考えてたのか」
俺はなにも迷惑だなんて思わないのに、とランスロットは感じた。ヴェインの負担になることは、自分も共有するつもりだった。二人で半分こと言ったのは、ヴェインのほうじゃないか。
「次は手伝わせてくれ」
ランスロットはそう言うと、自分もズボンの前を開けて、すでに勃起したそれをヴェインの尻にすりつけるようにして覆い被さった。
「ランちゃん、はやくねえ!?」
「もう三ヶ月も待たされたんだぞ、これ以上待てるか」
「潔いお言葉で......」
はじめは茶化すように言っていたヴェインも、はやくひとつになりたかった、とこぼすランスロットに引きずられて、だんだんとその気になってきた。ここにパーシヴァルがいたならば(そんなことはあり得ないが)、ちょろすぎるぞ駄犬! と怒ったことだろう。
「いれるぞ」
「う、ふ、......うううっ。うわ、ほんと、入った......」
準備をした、というだけあって本当に香油のすべりを借りて、するりと陰茎が入っていく。ぐ、ぐ、とランスロットが腰を進めるたびに、ヴェインはうめき声を漏らした。
「ランちゃ、苦し......」
振り向いて言うヴェイン。はじめては誰もが苦しいものだ。たしか、どこかに気持ちが良くなる場所――後から詳しい名称を知ったが、前立腺というところだ――があったはずだ、と暖かいヴェインの体内を陰茎で突くようにしてさぐる。
「あ、はっ、ふ......」
「待ってろ、ヴェイン。今すぐ気持ちよくしてやるからな」
そう言って、腰を掴んで動いた矢先、
「ああ!?」
ヴェインがひときわ大きな声を上げた。ここだ、とランスロットはポイントを見つけると、そこをめがけてがつがつと性衝動をぶつけた。
「ん、あっ、やばっ、ランちゃ、そこっ」
「気持ちいいか、ヴェインッ」
「は、はぁ、うんッ、ランちゃんはッ、は、ああッ」
後背位だというのに、一生懸命こちらの様子を伺おうとヴェインはしきりに後ろを向こうと首をひねった。快楽の奔流に流されながらも、ランスロットが気持ちいいのかどうかが気になっているらしかった。
「は、ほんと、だ。んッ、あ、はあっ。ランスロット、すっげー、エロい顔......。な、アッ、が、ううっ」
「お前も、ん、すっごく、やらしい顔してるぞ、ヴェイン......! 締まるし、ふ、持ってかれそう、だ!」
ランスロットの陰茎が体内を擦るたび、意味がわからないくらい気持ちが良かった。洗浄のときと同じように異物が体内に入っているのに、この違いはなんなのか、と思われるくらいだった。きっとそれは、ランスロットがヴェインの恋人で、愛しいという気持ちがそうさせるのだろうと曖昧になった頭でヴェインは思った。
「も、いいから、おれ、あっ、ランちゃんになら、なにされてもいいからッ。ランちゃんのきもちい、ように、動いて、は、ああ!?」
くれ、と言葉は続かない。煽られたランスロットが唐突に奥まで勢いよく挿入したからだ。
息が止まる。しかし、律動を始めたランスロットは止まらなかった。
奥の深いところまで犯され、刺激され、次いで引き抜かれて粘膜がひきつるような感覚にヴェインの脳髄がしびれた。チカチカと目の前に星が散っている。
「すご、ふ、ぐっ、おかし、く......、うあ、なりそッ」
「ヴェイン、ヴェインッ」
ランスロットは、今まで我慢していた分を取り戻すかのようにがむしゃらに腰を打ち付けた。ぱんぱんという、互いがぶつかる音が部屋に大きく聞こえた。
「あ、ひ、なんか、来るッ......! もう、む、り、かも......。あ、あ!」
「いくのか、ヴェインっ。俺も、だ!」
本当はずっとこうなることを待ちわびていた。ずっと欲しかったものが与えられる喜びに、もうすっかり快楽の受容体がぶち壊れてしまったヴェインは、びくびくと体をふるわせ、あられもない声をあげてよがった。
触られない陰茎は、射精することもなく、だらだらと先走りをシーツにぽたぽたと落としていた。触って欲しいと考える暇もヴェインにはなかった。
「きもちいいの、とまんな、あ、あ、ひっ」
「ヴェイン......、好きだ、ふっ、――――あ、はあっ、う、ああ!」
ランスロットは射精すると、陰茎を抜いてくたりとヴェインに寄りかかった。ヴェインは、達しはしなかったものの、何度も高いところに連れて行かれそうな、そんな気分を味わった余韻にそのままくずれおちる。
「ば、バカ......。中に出したら、たいへんなんだぜ、ランスロット......」
「責任とって、俺が処理するから、な」
「よくない、けど、今日は許してやるよ。すごかった、し」
はあはあと荒く息をしながら、ベッドに倒れ二人は会話をした。
なんだか、はじめてなのにすごいことをしてしまった気がする、とヴェインはえどことなく遠いところで思った。
・・
案の定、ヴェインは腹を下した。
原因はやはり後始末をしなかったせいだった。
その件を知ったパーシヴァルは激怒し、「セーフティセックスが聞いてあきれる!」と二人を叱りつけたのだった。
おわれ