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サーヤのメモ ―服屋の証言―

(シャノバロ 変装に悩むシャノワール)

服屋の店主 コレット・リダン
 ××年△△日 ブティック・リダン前


 あ、ごめんね。今店じまいするとことなの。......ああ、探偵さん? この間の窃盗事件について? ああ、そう。300ルピで話をきいたげる。いいでしょう?
 まあ、ここで話すのもなんだし、店に入ってちょうだい......そう? ならいいのだけれど。それで、こんな服屋のおばさんに何のご用ですか、探偵のお嬢さん。わたしの話せることは話してあげるけれど、そんなに期待しないでね。
 あの日は怪盗シャノワールがでたって、みんな大騒ぎで。うちのアルバイトに彼のファンの子が居るのだけれど、聞きつけてすぐに飛び出していったのね。シャノワールなら、わたしよりあの子――――ペトラルカに聞いた方がきっとあの日のことを教えてくれると思うけど。ああ、あの子の連絡先? ううん、勝手に教えるのもね......。
 そうねえ、あの子の出勤日は明日だから、また明日聞くといいんじゃないかな。ついでに服も買っていってくれたら嬉しいかもね。ドラフの女の子向けサイズもちゃんと用意してあるから。
 え、この写真? ごめんなさいね、ちょっと眼鏡。最近、目が悪くなって。......ああ、はい、このドラフの子? よく来てたねえ。覚えてる覚えてる。いつも店の前でショウケースに並んだ服を見ていたっけ。この子について? そんなに話したわけじゃないけど、毎日来て、飽きもせず見てるから、どうしたのって聞いたくらい。ほんとにそれだけ。
 ああ、そうだ。それで、聞いたのね。「最近毎日来てますね。気になるものでもおありですか」って。
 そしたら、その子、ええと名前はなんだったかな......忘れちゃったけど。まあ、その子がね、「男のひとって、どんな服を着たらよろこぶと思いますか?」って。ああ、デートに着ていく服でも探してるのかな、って思ったから、ドラフサイズもございますから~って連れて入ったのね。そのこ、やっぱりデートで悩んでるって言ってて。とりあえず~ってワンピースやらなんやら持ってきて合わせてあげたの。
 かわいい子だったから、フェミニン系とかナチュラル系とかどう? なんて、わたしも張り切っちゃって。だって、誰だってその子に似合う一着、みたいなものがあるって、あたしの主人が言っていたから。
 それで、ああでもないこうでもないってさんざ悩んで、白いワンピース一着だけを買っていったね。よく似合っててね、彼氏も喜ぶよって思ったね。
 ああ、最近? とんと来なくなったね。きっとうまくいったんでしょ。え? なんなの急に怒って、やっぱりって? ああ、300ルピね、ありがと。

 (走り書きで)あの日の少女はシャノワールと断定。清楚路線で攻めてきている模様。今後警戒するべし。

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