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問答ひとつ

(パズドラ ミカエルと劉備)

 世界には創造主がいる。それがミカエルの言うところの「神」であり、天使の上位存在であった。我らが神はこの世界の全てを創り給うた。そして、神はその責任に於いてそのどれに対しても贔屓をすることができない。よって、その可愛い創造物たちを見守りこそすれ、何を出来るわけではないのだ。
 しかし、人は言う。「神様、どうか」と1日に何億何万何千何百もの声が、祈りが、大小様々な形をとってこの天上へと伝わってくる。しかし、神はそれに応えない。応えられない。
 したがって、ミカエルも彼の主と同様、何も救えない。一人を救えば、その他大勢全てを救わねばならないからだ。それは大天使ミカエルといえど手に余ることだった。きりがない。きりがないならば、しない方が余程良い。ミカエルはそれを当たり前のこととしてきた。当たり前で、疑問のひとつも持ちやしなかった。
「それがどうして目の前の人を救わない理由になるのだ?」
 だからそうやって聞かれたとき、答えに窮してしまったのだ。
「神であろうが、天使であろうが、人であろうが、苦しんでいる人に手を差しのべることは、救いを求めている人の声に応えることは、よきことではないのだろうか」
 劉備はまっすぐな目で、声で、ミカエルにそう問いかけた。 
 ミカエルは答えられない。
  

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