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​手続履行執着心理

​​(ハマ独 ワンドロワンライ「不器用」)

「ここまで準備したんだから、やるしかないっていうのはあんまり同意できなくて」
 観音坂独歩が、文芸誌を覗き込んで、共学の学校を一切排除するという閣議決定を下したというニュースを指して言った。
「二郎君が――、ああ、彼とはコンテナヤードでの事件の時に仲良くなったんです。入間さん、二郎くんのことなにも考えてないガキだなんていいますけど、結構ものが分かる子で。『学校じゃ、ダンソンジョヒとか、そういうのわかんねえけどな』っていうんですよ」
「別に嫌いなわけではありませんよ。ただラップバトルのときは手加減しないだけで……。若者ですからね。大人の価値観なんか関係ないんでしょう。ほら、日本がまだ隣国と仲が悪かったときでも、平成にはK-POPがはやったじゃないですか」
 入間銃兎は、コーヒーを飲みながら、ソファに埋もれるように座っている独歩を肩越しに記事を見る。「おい、こぼすなよ」と、後ろから碧棺左馬刻の、少々とげのある声が飛んできて「だれがこぼすかよ」と銃兎は返す。
「観音坂さん、学校を分けるとか分けないとか、子供には関係ないんですよ。しかも、穏健派から批判もあって……、女性にも、人権活動家の方はいますからね。女性みんながとか、男性みんながとか、そういうわけじゃない。社会は一枚岩とはいいがたい」
「そうですね……。毒島さんはどう思いますか?」
「どうもこうも、小官はまず国内のこともだが、軍事的抑制力を持たないまま、外国からの脅威にさらされている状況が問題だと思う。いまは見逃されているか、腫れ物扱いされているだけに過ぎない――。日本というこの国がなくなるのは、小官も悲しい」
 独歩の隣に座った毒島・メイソン・理鶯はそうコメントした。彼は軍人であり、国を守りたいと思っている。それはマイクによるものではなく、背中に背負ったライフルであるべきだと彼は言う。
「てめえらなに雁首そろえてお通夜みてえに辛気くさい話してんだ。社会のこと言ったってよ、結局は手の届く範囲のことしか出来ねえんだから、出来ることやって、そんで手の届く範囲がしあわせだったらハッピーだろうがよ」
「だったら、入間さんは汚職をやめて、碧棺さんはやくざから足を洗って、毒島さんは戦うべきじゃないと思いません?」
「それは無理だってわかっているでしょう」
「筋モンがそう簡単にやめれると思うか?」
「ああ、軍がいきる道なものだから」
 口々に言い出す彼らを見て、独歩は方をすくめた。
「だからいやなんですよ。あんたたち」

 

 


 

あとがき
手続きを履行することにこだわるのはどうかと思うぞという話

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