ゴシップ・フレンドシップ
(銃独)
政治家ってかわいそうって昔思ってたんですよ。ワイドショーを見ながら観音坂独歩が言う。
「国会中継やるじゃないですか」
「はぁ」
入間銃兎は、生ハムの原木からハムをそぎおとしながら適当に相槌を打つ。別に銃兎は食に拘りがあるわけではないのだが(とはいえ理鶯のゲテモノ料理はごめん被る)、気づいたらなぜか宅配便で届いており、世話をする羽目になっている。
注文した当人は「俺の部屋だと生ハムがかわいそうじゃないですか」と言って銃兎と生ハムを同棲させるのだと聞かなかった。
「あれ、寝てる議員結構いて。その度になんやかんや言われますよね」
「そうですね。国の代表ですから」
「元号変わっても言の葉党の議員寝てるし」
「まあ人間だれしも眠いときは眠い」
ハムを数枚そぎおとし終わると、銃兎は皿に盛ってソファーの前のロングテーブルに置いた。独歩はまってましたとばかりに器用にくるくるとチーズをハムで巻いて、口にする。
「で、ネットニュースとかワイドショーで怒られて。家帰ったら家族もいるわけでしょ。お母さん昼のニュースで怒られてたよって。たいへんですよ」
「誰も同じですよそんなの」
「ですよねえ」
俺もだいじな会議で寝かけて怒られたことあるし。と、独歩は続ける。「ワイドショーには乗らないですけど」
「いち会社員がワイドショーに取り上げられることなんてそうそうないですよ」
「その【そうそうない】ことになってるんですけど。俺みたいなのがあの政治家と同じになるなんて思わなかったですね」
「ディビジョン・ラップ・バトルは民衆の娯楽ですからね。注目されるのも無理ない」
独歩はちらりと窓を見て、なんの変哲もないプリウスがマンションの前に止まっているのを見る。
「俺も帰ったら一二三に、どっぽ東○ポにすっぱぬかれてるよ! とか言われるんですかね」
やだなぁと独歩はテレビで流れるワイドショーを見る。銃兎は、少しだまって「ただの友人になるのも、こうも難しいもんなんですねぇ」と言った。
「友人以上の関係に書かれますよ。かわいそうな俺たち」
やだなあ、と独歩はあんまり嫌そうじゃない口調で言って、缶ビールに口をつけて笑った。
あとがきゼロサム見て、独歩は無名なんだなって