top of page
好きということ
(ラン→ヴェ。ランスロットとゾーイが話しているだけ)
「なぜ、人は好きという気持ちを伝えないのだろう」
ゾーイは、ランスロットに向かって言った。お気に入りだという棒つきのキャンディを持っている。
「わたしはこのキャンディがとても好きだ。そして、人に好きだという。すると、皆がそれをくれる。とてもいいことだ」
欲すれば、与えられる。でも、わたしが好きと言わなければ、誰もソレを知ることはない。違うだろうか? そう問いかける彼女を、ランスロットはまじまじと見る。
星晶獣たる彼女は、世間離れしていて、普通人なら聞かないようなことを口にする。「どうしたんだ、一体」
「ランスロットは、ヴェインに好きと言うか?」
ああ、とそこでランスロットにも察しがついた。この星晶獣は、ランスロットがヴェインを特別視しているのを知って(それが恋愛感情であるというのはおそらく分かってはいまいが)聞いているのであった。
「その好きは、キャンディを好きと公言するのとは少し違う」
「そうなのか?」
「ヒトはモノより時に複雑だ。だから、俺が好きと伝えることで、壊れてしまったり、台無しにしてしまうものがある」
「キャンディを食べて、好きだ、又食べたいというのとは、違うのか」
ゾーイは肩をすくめ、口をとがらせた。
それが幼い子どものようで、ランスロットにはおかしかった。
「でも、わたしは、ヴェインがキャンディなら、欲しいとお前は言うだろうと思う」
しかし残念ながらヴェインはキャンディではない。
おわる
bottom of page