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宗教画
(カルデア・シロシェイ)
シェイクスピアがスランプだ、とアンデルセンが苦々しい顔で天草四郎時貞に言いに来たので、彼はルームに置いてある救急箱を手に取った。
「あの、執筆中毒め。ジャンキーだ。俺の言うことなんか、聞きやしない」
アンデルセンは大きくため息をついて、後はまかせたと天草に愚痴って立ち去った。
・・
天草が書斎の重い扉を開けると、やたらと大きいガリガリと鬼気迫る、ペンと紙がこすれる音が聞こえた。かと思うと、ぴたりとやみ、紙をぐしゃぐしゃにする音が響く。
「シェイクスピア」
天草が声をかけても気づかないようすで、シェイクスピアは左手の爪をがじがじと噛み、白紙の原稿を前に何か思案するようすであった。
ああ、と天草は嘆くと、古い呼び名でかの者を呼んだ。「キャスター」
「やめなさい、こちらを向いて」
すると、はじかれたようにシェイクスピアは反応する。人形のようにぼうっとしている彼の左手からはかじったことによる傷口ができていて、血がポタポタと垂れていた。
「ああ。またやったのですか。治さなくては」
天草はその手をやさしくとると、自分の手が汚れるのもいとわず、医療用ガーゼで血をぬぐってやった。
おわり
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