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シューティングスター、フォーリンユー

(リクエスト:シャノバロがデートするならどんな感じか こんな感じになりました)

 その日のバーは、閉店間近だというのに、一人の客がまだ帰らずにぐずぐずとエールを煽っていた。
 マスターもこれには困っていて、どうにか帰そうと声をかけるが、すっかり酔い潰れてくだをまくドラフの男には届かない。
「探偵さん、もう閉めますよ」
「ん~~、むにゃ、くそ、今日もヤツに遊ばれたってのに帰れるかっ。マスター、もう一杯!」
「だから帰ってくださいって」
 ヒューマンのマスターでは、ドラフの男――――バロワの体をうごかすのもかなわず、困ったようにため息をつく。
「あ、マスター。そのひと、俺が送りますよ」
 ちょうど裏から出てきたエルーンの青年が、マスターに声をかける。マスターは、お前じゃ無理だろうとアルバイトに言うが、彼は平気そうにバロワの腕を肩に担いで立ち上がらせた。


・・


 星がやたら綺麗に輝く夜だった。
 エルーンの青年は、人目が少なくなったところでシルクハットにマントの――――おなじみ怪盗シャノワールの姿に変わる。
「全く、君というものは世話の焼ける」
 そういうシャノワールは、やけに機嫌がよさそうだった。担がれているバロワはというと、酒のせいでうまく現実を認識出来ていないらしく、シャノワールがすぐそばにいるというのに、捕まえようとはしなかった。
「なあにが、世話の、焼けるだ。貴様なんかに世話を焼いて貰う筋合いはない」
 バロワはそういうと、むにとシャノワーツの左頬をひっぱった。かわいらしいことだとシャノワールは笑う。
 そんなとき、シュッと夜を一筋の光が通り過ぎた。
「ああ、流れ星だ」
「なにい、流れ星?」
「願い事をしないと、名探偵。私を捕まえられるように願うのかい」
「そんなことするか。俺は俺の推理と技術でぜえったいに貴様を捕まえるんだからなッ」
 酒臭い口でそんなことを言うバロワは、目が据わっていて真剣な表情だった。そこに嘘はなかった。シャノワールはそこに星を見た。
 シャノワールは、それに「星明かりがまぶしい」と言ってバロワの頭を撫でた。
 うるさいのは空ばかりで、二人のそんな姿を見たものは一人としていなかった。


おわり

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