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​コーラがビールになっても

(ヒプ ひふど 高校生)

 ストロングゼロのアルミ缶をぐしゃりと踏み潰して、熱を発するアスファルトに追いたてられるように通学路を歩く。

汗で張り付いたシャツがやけに気持ちが悪くて、誤魔化すためにコーラを一気に飲んだ。

 独歩は、東京の大学に進学するのだという。

 幼馴染みといってもずっと要られるわけではないのだ、とその時俺ははじめて気がついて、寂しさが心臓を締め付けた。いままでがこれからもずっと続くなんて馬鹿らしいことを信じ続けていた自分がおろかに思える。

 大人になるってそういうことで、実際俺は子供の頃すきだった絵本の置き場も覚えていない。それでも独歩だけは、なんとなくずっととなりにいてくれるもんだと思っていた。

 でも俺たちは大人になって、友だちでなくなって、おしいれのなかのラジコンカーみたいにお互いほこりをかぶって忘れてしまうのだと突きつけられているようで、どうにも泣きたい気分だった。

 こんな最低な日でも、太陽は能天気に照りつけてセミは間抜けに鳴いている。

 進学すると告げてからだんまりだった独歩は、コーラの瓶を口から離して、汗をぬぐうと、「なあ一二三」と落ち着いた声で言った。

「あー、20になったら、なっても、か。またこうやって二人でビール飲むぞ」

 おまえの辛気くさい顔は見たくない、と不器用に続けられた励ましがどうにもうれしくて、そんなこと言ったら俺もう一生独歩のこと離してやらないよ、といってしまいそうになり無理やり炭酸で流し込んだ。

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