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最終列車に飛び乗って
(左独 2018/11/11 左馬刻さん誕生日ネタ)
碧棺左馬刻のスマートフォンがなったのは、もう日付が変わろうとしていた時だった。
「ああ? んだよ、こんな遅くに」
ぱ、と出れば、聞きなれた声が耳に響いた。
「あ、左馬刻くん。あの、用事があってヨコハマまで来たんだけど、タクシーなくて......。駅まで迎えにきてほしいな、なんて」
ごめんね、と繰り返すのは、シンジュク代表麻天狼のひとり、観音坂独歩だ。
「俺様をタクシー代わりとは、いいご身分だな、観音坂さんよ」
「ひっ、ごめんなさい。でも、どうしても来たくて」
それで、君に会いたかった。そう言われれば、流石の左馬刻も無下には出来ず、事務所から車を走らせた。
・・・
「ごめんね、左馬刻くん」
駅まで乗り付けた左馬刻の愛車を見た観音坂は、よたよたと覚束ない足取りで近づき、まず謝罪をした。左馬刻は、彼を睨み付けると「謝るくらいなら最初から呼ぶんじゃねーよ」と吐き捨てる。
「ごめん。本当は有給とってとか、定時に帰ってとか考えてたんだけど、やっぱり残業で。でも俺、どうしても左馬刻くんひ誕生日おめでとうって直接いいたくて」
観音坂は、しどろもどろになりながらそんなことを言った。 「最終列車だってわかってたけど、無理矢理きちゃった」
おめでとう、左馬刻くん。疲れに疲れているのだろう。観音坂はフラフラしていた。こいつは真性の馬鹿野郎だ、と左馬刻は思ったが、同時に恋人に祝ってもらえたのが、どうにも嬉しかった。
しかし、素直に嬉しいなどと言える左馬刻ではなく、照れ隠しでふん、と顔をそむけてタバコに火をつけると、「おせえよ。もう12日だっつーの」と言って煙を吐いた。
誕生日遅刻したので
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