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​キャッチバットノットリリース

​​(みつたい やがて幹部になる中学生みつ×たい R18です!!!!!!

「サメって、共食いするの?」
 水族館の大きな水槽を見ながら、隆はそう聞いた。大寿と付き合いを持つようになってから、もう何度目かのデートだった。二人が会うのはたいてい、隆が幅を利かせている原宿だったが、大寿が水族館に何回に一回かは行きたがった。
 そして、彼がきまって足を止めるのはサメが泳ぐ大水槽だった。「シロワニ」と書かれたプレートを見て、隆はワニなんだかサメなんだか分からないな、と思いながら、大寿に付き合う。
 隆は産まれてこのかたテーマパークや水族館、動物園なんてものとは無縁の生活をしていたから、静かに流れる時間がどうしても我慢ならなくて、じいと水槽を見続ける大寿の手を触る。大寿はすこし嫌そうに――それが恥ずかしいという気持ちからだというのはもう了解している――隆の手を振り払うと、「する」と答えた。
「シロワニは、子ども同士で食って、でかくなる。産まれるのは一〇匹だが、生き残るのは二匹だ」
「フウン。怖いね。オレはアザラシやイルカとかの方が好きだけどな」
 隆は、すこし前の水槽にいたつぶらな瞳のアザラシを思い浮かべる。どう考えても、水族館の人気者はあっちだ。シロワニの水槽の前でじっとしている子どもなんか、あんまりいない。その上この図体で強面の男が水槽の前から動かないのだから、ますます人も寄ってこなくなっていた。
「アザラシはイルカを食うぞ」
「え。そうなんだ」
「ハイイロアザラシは、別種のアザラシを食うし。別に共食いは珍しい話じゃねえよ」
 大寿は肩をすくめる。人気者も共食いをするのか、と隆はがっかりとした気分になる。まるで、「優等生もいじめをするんですよ」と教師に言われたときのようだった。
「だが、それが悪いとは誰も言わない」
 弱肉強食の世界に行きたいのは、だからなのか? と隆は言いかけた。八戒が昔、言っていた。「アイツの夢って知ってる? サメなんだぜ。イカれてるだろ」
 子どもの夢物語みたいなそれが、にわかに現実主義的な大人のそれへと変わる。サメの世界は、強いモノが生き残り、弱いモノが死ぬ。そこに法はない。誰も文句を言わない。誰も彼を罰しない。
「……大寿くんは、まあ。野生の方が生きやすいのかもね」
「ア? バカにしてンのか」
「してねェ」
 水槽の中で、窮屈に行ったり来たりしているシロワニが、濁った目で隆を見ている。だが、大寿が〝もし〟サメになれるとしても、隆はそれをさせてやる気はなかった。

 ・・・

「あぁ……。ア、はあっ。し、しつこいっ。しつこい、ぞ……ッ。あ、イ、イく、イくだろうが……っ」
 ベッドの上で、シーツを掴んで大寿は快楽にもだえた。普段すました顔の大寿が自分の手や、舌づかいで顔を真っ赤にして乱れるのが、隆の根源的な征服欲を満たした。
「いーじゃん。一回イっときなって」
「あ、うっ。俺だけってのは……あ、あっ。止め、止めろっ」
 本当に止めて欲しければ殴ればいいのに、大寿はそれをしない。枕にすがり、ひきしまった腰を上げて、ぐちぐちとローションにまみれたアナルに隆の節くれ立った指を受け入れている。大寿はふうふうと息を吐いて、前立腺をこねまわす隆の愛撫に身も世もないという風にもだえた。
「止めねえよ」
 止めろ、と形式ばかりの制止を隆は無視した。水族館のときから、すこし腹が立っていたのだ。自由に水槽を泳ぐサメばかり見ていて、隣の自分のことなど気にも留めない恋人に。お互い陸にいるのに、性行為をするときに喘ぐ大寿はまるで打ち上げられた魚のようで、それもいけ好かない。
「ぁ、あ……。クソ、なにっ。怒ってンだ。みつやァ」
「はあ? 怒ってねーし」
 隆はぶっきらぼうに、ナカにいれる指を追加した。肌が触れていると、安心する。隆は溶けて弛緩した大寿のアナルが自分の暴虐を受け入れてくれているのが、「赦されている」という実感を自分に与えるのを感じていた。こうしていられるうちは、大寿は海に帰らない。自分のそばにいてくれることを選択してくれている、それが嬉しくて、隆はついついこうして求めてしまう。
「おこって、ンだろ。ガキだな、おまえ、も……ぐ、うう、ぁ、あ、いく、いく、あ……ッ!」
 大寿の太くたくましいふとももが痙攣し、陰茎から白い液体が噴き出した。内側から押し出されるように射精された精液は、誰の子も成しえない。隆は笑う。生来兄として押さえつけられていた、子どもの身勝手な独占欲がこぼれてあふれ、たまらなくなってそのまま達したばかりの大寿に挿入した。
「ハア、なっ……まだ、イッてるってわかるだろ……。アア、この、バカ」
 大寿の腰が跳ねる。それをバックから体重をかけて、隆は奥の奥まで挿入を深めた。背中の十字に磔になるように大寿は快楽から来る苦悶の表情で息を漏らした。そして、そこに磔になっているキリストに見られている罪深い人間は隆であるような気さえした。
「は、あ……。イったばっかなのが、いいんじゃん。やば、腰動く……」
 実際、大寿のなかはどろどろになって、隆の陰茎を食いしめた。胸がはやる。シロワニが、仲間を食い荒らすイメージが隆の頭を過った。
 そこからは隆は無言だった。大きな体を持つ大寿とセックスしようとなると、隆は懸命になるしかない。
「ふか、ふかい……。、っ。三ツ谷、三ツ谷……」
 大寿の低い喘ぎが、ラブホテルの部屋に響く。薄い壁ごしにでも誰かに聞かれていたら、と思うと嫌だった。何処にも行かせたくないと強く隆は思う。そう思うごとに、律動ははやくなった。
 ほしがるように、大寿は睨む。ひどくされるのだって、別に彼は嫌いではない。それを隆は知っている。食物連鎖の頂点にいながら食べられるのを待っているなんて、それを食べてしまえるのが自分だなんて、なんという甘美な背徳! まだ十代の隆には毒のようなものだった。ややあって、隆も大寿のアナルから陰茎を抜き取り、その背中に精を放った。
  
 ・・・

「それで、なんで怒ってたんだ?」
 シャワーを浴びた大寿が、バスローブ姿で隆を見下ろす。いやべつに、と隆が歯切れ悪くはぐらかすと、大寿はそれ以上追及せず、黙ってキングサイズのベッドに寝転んだ。
「オレもシャワー行ってくる」
 隆は逃げるように、シャワー室に駆け込む。そのままシャワーのコックをひねって、まだなまあたたかい湯を浴びた。言えるはずもないだろう。今日訪れた水族館で、自分ではこの男はつなぎ止められない、と思ってしまってからずっと拗ねているなんて子どもっぽいことを。
 ろくに拭いもしないで顔を出せば、大寿はもうとっくに寝入っているようだった。その姿が、シロワニに見える。そして、そのまま彼は夜の空を泳いでどこかに行ってしまうのだ。大きな窓から見える星空とビル群が、隆を無駄にセンチメンタルな気分にさせた。
 はあ、とため息をつくと、隆はベッドに潜り込む。そうすると、がばりと大寿に抱き込まれる。ただの寝相だ。くーかーと寝息を立てている。
 そういう男だ、柴大寿というのは。いつも思い通りになんか、なってくれやしない。〝なってくれている〟だけなのだ。二十で起業するのが夢だと語る彼に、隆は「オレはデザイナーになりたいよ」とは言わなかった。言えなかったが正しい。
 隆は、必要とあらばこの手を離さなければならないことをどこかで悟っていた。もう、族でもなんでもない、ただの一般人である大寿の大きな手を。
 だって、メリットなんかなんにもない。自分はいつかマイキーについていった先で、悪い大人になってしまうだろうから。
 この手を離さなければならなかった。できるだけはやく。自由にして、シロワニのごとくこの大海に泳がせるべきだと。
 だが、今ではなかった。今は、ただ、共食いをしあう人間として、愛し合っていたかった。弱い隆を抱き込むように、大きな体が身を寄せる。
「ああ、好きだぜ。大寿」
 俺もだ、とは規則正しい寝息でかえってこなかった。

                                   終 
 

 

 

 

 あとがき

 幹部軸になる前の、中学~高校みつたいが描きたかったです。
 エッチは添える程度に、弱い三ツ谷が書きたかった。本誌の三ツ谷がかっこよすぎたので、こっちの(幹部軸の)三ツ谷は弱くていいかな~と思って性癖に従いました。

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