ジョークはほどほどに
(R18 フーカズ現パロエッチな二次創作)
嘘を言うヤツばバカだ、とフータはエイプリルフールのまとめ動画を見ながら思った。エイプリルフールでSNSのアイコンを変えたりして遊ぶヤツも紛らわしくて嫌いだし、ソシャゲの寒々しいネタも正直飽きていた。毎年毎年ご苦労なことだ、とため息をつく。
「うぜーな」
「なにが?」
リビングのソファにもたれかかって、悪態をつくフータに風呂からあがったカズイが声をかける。テレビには依然として動画サイトのまとめ動画がスクリーンミラーリングでうつされている。
「エイプリルフールとかマジありえねえと思って」
「あー、そうね。フータは嫌いか。こういうの」
カズイは笑って、真面目なところのある恋人の隣に座って言った。「まあ、エイプリルフールだと、ほんとうのことを言っても相手にされないかもしれないしね」
狼少年の最後みたいに、と続けるカズイは、頬杖をついてテレビを眺めた。
「まあでも、嘘を嘘と見抜けない人間も悪いかもね。ジョークって、そういうもんだろ。俺はエイプリルフールのジョーク、楽しくて好きだな」
「楽しいことあるかよ」
ぶすくれた顔で、フータは反論する。そして、動画アプリを閉じてしまった。動画が消えたテレビに、カズイは「面白かったのに」と文句を言った。
「嘘だけじゃもったいないのも多かったね」
「どうせウケがよかったらホントにするんだろ。そういうマーケティングだよマーケティング。あーあ」
「まあ、嘘からでたまことっていうのもあるしね。マーケティングにはちょうどいいのかも」
ぶうぶうとフータが不平不満を並び立てていると、カズイは「あ、俺もさあ。嘘みたいな話があって」といましがた思い出したように言った。
「なんだよ」
「いやー、それがさ。通勤途中の電車で痴漢にあっちゃって……」
「ハア~~~~!?!?!?」
バン! とローテーブルを台パンしてフータは立ち上がった。カズイは依然として平静なようすで、「いや、これがほんとうでさ」と続ける。
「そのひと、外国人で。俺よりぜんぜんデカくてさ、窓際に追い込まれたと思ったら、まさかの痴漢で……」
なんのこともない、それこそエイプリルフールのジョークのようなテンションで続けられる告白に、フータはついていけない。
「ち、痴漢って。大丈夫だったのかよ!?」
「そりゃ、俺は警察官だし、並の男なら倒せた自信はあったんだけど、さすがに満員電車にでかい外国人ってなると抵抗が難しくて……」
内容のわりに、カズイは軽い調子だった。他人事のように話すのがもどかしく、フータは「ちゃんと話せよ」とせっつく。
「そいつ、俺を窓際に追い込んだと思ったら自分の図体で隠してさ、俺の尻さわってんの。撫でるとかじゃないぜ。ぎゅむ……♡ って、フータなら絶対しないような乱暴な感じでさ。デカイ手でもんできたんだよ」
カズイよりさらに大きい男が、体格差にものを言わせて無理矢理に尻を揉んでいる姿をフータは想像する。ぎりり、と歯ぎしりが漏れた。そんなの赦せるか? 赦せるはずもない。恐ろしい目にあったというのに、あっけらかんとしているカズイもカズイだ。
「た、助けを呼ぶとかしろよ、警察がお手本できないでどうするんだよ」
「そりゃしたかったけど、今日はエイプリルフールだし。俺みたいな体格の男が痴漢って言っても信じて貰えないのが関の山だぜ。幸い仕事場まで数駅だったから、耐えればよかったんだ」
「た、耐えればって。じゃあ、その間ずっと我慢してたっていうのかよ!? されるがまま!?」
動揺で、フータはソファに座るカズイに詰め寄る。さっきから嫌な予感ばかりが頭にちらつく。ほんとうに無事だったのか。被害はそれだけなのか。そいつはどうなったのか。まあまあとそれをいなすと、カズイは「教えて欲しい?」と婀娜めいた目つきでフータを誘った。
「俺が大丈夫だったかどうか。直接確かめるか?」
ごくり、とフータは喉をならす。
・・・
フータを寝室に連れ込むと、カズイはベッドに座り、フータを膝に導いた。フータはカズイの膝にまたがると、カズイの手によってその臀部を触らせられる。
「はは、やっぱりフータの手は小さいな」
「なんだよ。バカにしてるのか」
「いや、そうじゃないさ。痴漢の男はもっと大きかったっていう話。……そいつさ、その大きい手で、まるで俺の弱いとこと全部分かってるみたいに、挿れさせてくれって頼むみたいにさ、触ってくるんだよ」
嫌なのに、抵抗できなくてされるがままになっている恋人の姿を想像して、フータは頭が真っ白になる思いだった。ひどくショックだ。それ以外にない。
「フータの触り方と全然違うのに、ダメだって分かってるのに……。よくないな、最近ご無沙汰だったろ。だらしないって罵ってくれよ。――感じてたんだ、俺」
「お、オマエが悪いわけじゃないだろ!」
「知らない男に乱暴されて、気持ちよくなってちゃ同罪だろ。なさけないなあ。フータじゃない、違うって分かってるのに、分かってたのに、腹があつくなってさ。挿れてくださいって言ってるみたいだった。向こうも分かってたんだろな、勃起したのを手に押しつけてきて……」
フータはおぞましい光景を語り聞かされて息が荒くなる。こんなこと、カズイも語るのはいやだろうに、なぜだかカズイは話をやめない。
「その時点で〝負け〟てたんだ。俺。フータじゃない、って分かってても、目の前の男のことしか頭になかった。セックスしてほしい、って」
耳元でそう囁くカズイは、フータに想像を促すようでもあった。いやだ、と思うのに、誰とも知らない相手に無体を働かれる恋人の想像が止められない。行為は電車内で終わったのだろうか。考えるだけで汗が出る。喉が渇く。
「なーんてな。嘘だよ。ちょっと言ってみたかったんだ」
だのに、急にカズイは明るい口調になって、フータに笑顔を見せた。フータは固まる。
「は?」
「まあ、痴漢自体は嘘じゃないけど、ちゃんととっちめたよ」
「あ? 嘘……? ば、バカか……?」
フータはどっと疲れてカズイの身体に身を預けた。痴漢自体は嘘じゃない、というのも問い詰めたいところであったが、それどころではなかった。心臓に悪い。ドキドキがおさまると、こんどはふつふつとこのイタズラ好きの男に怒りが生まれ、フータはカズイをにらみつける。
「ハハ、ホントだと思った? やだなあフータ。こんなおじさんに構うやつなんて二人もいるわけないだろ……」
「冗談にもならねえ嘘つくなこのバカ! 心配しただろうが!」
「ありがとなフータ。おじさんだってそんなヤワじゃないから、実際大丈夫なんだけどね」
でも……とカズイは続けながら、ぐい、と膝を曲げてフータの股を押し上げた。そこは、驚くことに、フータ自身も気づかないでいたが、うっすらと硬くなっていた。
「想像して、勃起しちゃった? はは、フータも変態だな」
「へ、変態はどっちだよ!」
「ほら、ちゃんとしないと、今度は本当に俺、誰かに寝取られるかもしれないぞ…♡」
カズイに挑戦的な目で見られ、今度こそ、ぶつん、とフータの堪忍袋の緒が切れた。こんなの、もうお仕置きしてくださいなんていっているものだろう、とフータは憤慨する。座っていたカズイをベッドに突き飛ばすと、フータは三白眼をつり上げて、「覚悟しろよ」と言う。
・・・
「誰にも触らせてないんだろうな」
カズイの寝間着を脱がし、そのがっちりとした肉体に手を這わせると、カズイはうれしそうに喉を鳴らして喜んだ。老いてますます盛ん、という言葉があるが、カズイはセックスになると普段見せないような乱れ方をし、フータをほしがる。
「んッ、触らせてないぞ、フータだけ。フータしか許可してない」
「嘘つきがなにいってんだか」
「ほんと♡ ほんとだってば♡ 確かめればいいだろ、なっ。おじさんがフータ専用だって、ちゃあんと、フータだけのだって、確認したらいいだろ……♡」
「言われなくても確認してやるよ、人が真剣に心配したっつーのに、嘘ぶっこいて」
甘い声を出して、カズイは尻をフータに差し出す。乞うように高く尻をあげて、くぱあと広げ、入り口を弄ると、とろとろとローションが垂れてきた。この男、こうなるのがわかって準備をしてきたらしかった。最初から、フータはこの男の手のひらの上だったというわけ。
「俺がこんなことするの、フータだけだぜ。ほら、すぐ挿れられるように、な」
「これが欲しくて、あんなしょうも無い嘘ついたのかよ。セックスしたいならちゃんと言えって」
「ん、嘘ついてごめんな、もう言わないから」
だから、な♡ と誘惑するカズイに乗せられ、実のところもう限界だったフータは勃起した陰茎をカズイに挿入する。負担をかけないようにゆっくりと挿れると、うれしがるように肉壁が抱きしめてきた。ぎゅう、と締め付けられ、射精しそうになるが、フータは息を吐いて我慢をする。
「んッ……♡ フータの、硬い……♡ 興奮したのか? やっぱり」
「ち、ちげーよ! クソ、バカにしやがって……!」
ごん、と奥まで挿入すると、フータは馴染むまで待ってやろうとした。なのに、カズイは振り返ってへらりと笑うと、挑発的な視線をよこす。そこで気遣ってやろうだとか、優しくしてやろうとかいう気持ちは毛頭なくなって、フータは勢いよく律動を始めた。
「んぎゅっ♡ まっ、フータッ……、はげし、ん、お゛っ、」
「そんな声、誰にも聞かすんじゃねえぞ」
「きか、聞かさないっ♡ フータだけっ♡」
「そう、オレだけにしとけばいいんだよ! 嘘でも言っていい嘘と悪い嘘があるだろうが!」
怒りにまかせて、跡がつくくらい彼の腰をにぎりしめ、前立腺の辺りをごんごんといじめると、カズイははしたない声を出して善がった。常ならぬ様子のフータに興奮しているのはカズイも同じのようだった。
「あっ、フータ♡ フータあッ♡ あ、あっ、それ、だめっ♡」
「ダメじゃねえだろ、まだイッてないくせして……ッ!」
甘く善がるカズイに、フータは怒りと興奮のままピストンを続けた。自分だけ、とカズイは言うが、「今」はそうなだけで過去を参照すればそうではないということは分かっていた。だから余計に悔しいのだ。
「ナカイキはつらいから、おじさん、あした動けなくなっちゃうから……♡」
「じゃあしろ、絶対しろ、明日はオレが世話してやるからよ!」
「ひ、んぐッ♡ ん~~~~ッ♡ い、イく、……ッ♡」
押し出されるように、カズイの陰茎から精液がぱたぱたとこぼれる。びくん、と身体が跳ね、身も世もないという風にシーツに縋る姿がたまらなくいやらしい。へたり込むカズイの重たい腰をあげさせ、フータはばちゅばちゅと律動を続ける。
「ふ、た……、ちょ、ちょっと休憩させ、させてっ」
「まだオレがイッてねえだろ。付き合え、よっ!」
自分本位なピストンでも、カズイは喜んで後穴でくいしめた。ぱん、ぱん、と肉がぶつかり合う音が響く。射精は近かった。せり上がる射精欲を我慢できず、フータは「出すぞ」と言う。
「はー、っ、出して、いいぞ……♡」
「くそ、腹痛めてもしらねえからな……! ッ……!」
カズイのなかで白濁がほとばしる。精液の濁流が腹に流れ込んでくるイメージで、カズイも軽く絶頂した。そのまま、フータはふうふうと息を吐きながら、まだ出し切ってないそれを塗り込めるようにゆるゆると腰を動かした。
「ふふ、フータはかわいいなあ……」
二人の息が整うまで、お互い無言だった。先に回復したカズイがそう言うと、フータは「はあ?」と荒い息を吐きながら返す。
「いや、嘘に簡単に騙されるところがかわいいと思って。おじさん、調子乗っちゃうかも」
「オマエの嘘がリアルすぎるんだよ……」
次はなんて嘘ついちゃおうかな、なんて言うカズイに、フータはため息をつく。いつも上手の男にもてあそばれている感じがとてつもなくして、悔しいばかりだ。
「あ、これはどう? 『フータがナカだしばっかりするせいで、赤ちゃんできました』とか?」
「ば、バッカじゃねえの!?」
フータが顔を真っ赤にすると、カズイは腹を撫でて、笑った。