青い監獄の夜
(ブルーロック ばちいさ)
例えばこれが恋愛感情だったとして、それを蜂楽は潔に伝えるつもりはなかった。だって、今こうやってサッカーしてるのが楽しかったから。だって、そんなことしなくたって、潔は隣にいてくれるから。
「ねえ潔、俺たちずっとどこまでも一緒にいられるかな」
「いや、それはムリだろ。だって、ここで一番になるのは一人なんだし……。ここの十一人だってずっとってわけじゃないんじゃないかな」
「そうだよねえ。でもでも、ブルーロックで一番になるのは俺だよ」
蜂楽は布団から身を起こして、潔に向かって言った。潔は、煽られたように「俺だって」と返した。その目が真剣だったので、蜂楽はやっぱり潔のことが好きだなあと思う。
蜂楽は、最下位から2番目でもずっと野心をむき出しにしている潔を笑ったことは一度も無かった。それどころか、ひょっとしたら彼が最高のストライカーになる、と信じてすらいた。自分が一番なのは当たり前として。
エゴの香りがする、潔のことが蜂楽は好きだった。ここがブルーロックじゃなかったら、ずっと一緒にプレイしていたいとすら思うくらいに。もし潔が女の子だったら、絶対に付き合っていたと思うくらいに。だが、潔は男だし、生き残るのは一人だ。いつか、蜂楽は潔を蹴落とさなければならない。
それってちょっと嫌だな、と蜂楽は思った。でも、もし、最後の最後に潔を地獄にたたき落とすなら自分がいいなとも、裏腹に思っていた。自分以外は嫌だった。それは、千切にも、國神にも、その他のみんなにも譲りたくない、と感じた。
それはやっぱり恋愛感情ではないのかもしれないけど、紛れもなく蜂楽にとっては愛そのものだった。最後の最後まで、潔とプレーしていたい。それで、もしほんとうの最後になってしまうときが来たら、引導を渡すのは自分が良かった。
「あのさ、約束しない?」
だから、蜂楽はこう静かに言った。潔は、眠そうな目を擦って蜂楽を見て、「何を?」と聞いた。
「お互い最後まで生き残ってさ、それで、最後の最後になったら、敵になろうね」
蜂楽はニッ、と笑って言った。この先のことは分からないけど、そうがいいと思った。否、そうでなければ嫌だと思った。生粋のエゴイストたる自分と、エゴの香りがする潔が、サッカーでぶつかり合うところを想像して、蜂楽はうれしさでぞくぞくとした。
潔は、それに「いいよ」と言った。
「言っとくけど、俺が勝つからな」
「まだ自分の武器も見つけてないのに?」
「蜂楽、それは言わないでくれよ……」
潔はがっくりと肩を落として、また布団のなかに潜ってしまった。蜂楽はそれにおやすみ、と言って、自分も眠った。